ガイドライン策定の経緯

SIPスマート物流サービスとは

SIPスマート物流サービスでは、サプライチェーン(SC)全体の最適化を図り、物流・商流分野でのデータを活用した新しい産業や付加価値を創出し、物流・小売業界の人手不足と低生産性の課題を解決します。
先行するセキュリティ等の取組や、港湾内物流情報の電子化に向けた取組などとの連携を視野に入れつつ、国内外のSC上の様々なプレイヤーが持つ物流・商流データを革新的技術で見える化し、最適化に向けて共有・活用できるオープンでセキュリティの担保された「物流・商流データ基盤」を構築します。これにより、現状では個社・同一業界内に限定した取り組みに止まっているものが、SC上の垂直・水平プレイヤー間のコネクティビティを高め、オンデマンド、トレーサビリティ等の価値を生み、高い物流品質の維持と荷主・消費者の多様な選択肢の確保を同時に達成し、イノベーション(新たなサービス、テクノロジー等)を創出できる物流・商流環境の実現を目指します。

SIPの「物流・商流データ基盤」とは

SIPの「物流・商流データ基盤」は、近年、我が国の物流業界が抱える

・トラックドライバーの高齢化や労働力不足といった人手不足
・輸送の小口多頻度化や時間指定配達の進展といったニーズの多様化
・トラックの待ち時間、ドライバーの拘束時間が長いといった独特の商慣行

等の課題に対して、これまでの個社やグループ単位の「個別最適」の物流から、情報に基づく計画物流を構築しサスティナブルな「全体最適」の物流を目指して、個々に蓄積されているデータを繋ぎ合わせ、各社が共有化してデータを利活用できるデータ基盤として構築されたものです。この「物流・商流データ基盤」は、政府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の12課題の一つである「スマート物流サービス」において、2018年度~2022年度の5か年間、SIPの国費を投じて研究開発が進められました。

具体的には、国内のメーカーや物流各社、小売等では、生産情報、在庫情報、輸送情報、物流リソース稼働状況、販売情報等といった既存の物流データや物流に関わる一部の商流データが個々に蓄積されており、ビッグデータとしては存在しない状況にあります。そこで、「スマート物流サービス」では、オープンな「物流・商流データ基盤」を構築し、これらのデータを収集、可視化することにより、物量予測等による人員の適正配置や、共同配送等によるリソースの有効活用、有事の際の商品供給等への活用を可能としました(図1参照)。このデータ基盤には、物流・商流の効率化に資するとして公募により選定された地域物流、リテール、医療材料、アパレル、医療機器といった5業種の業務システムが実装されています(図2参照)。

また、この研究開発に関する基礎的な取り組みとして、このSIP「物流・商流データ基盤」上に蓄積されたデータに対して一気通貫での可視化を図るため、データの標準化についても検討されました。その成果が、本ホームページの物流情報標準ガイドラインとなります。
「スマート 物流サービス」では、この「物流・商流データ基盤」の構築を通じて、「Society 5.0」の概念であるサイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させ、経済発展と物流・商流の担い手不足等の社会課題の解決を両立し、人々が快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることができる人間中心の社会への寄与を目指しています。

SIP「物流・商流データ基盤」の構築、省力化・自動化に資する自動データ収集技術の研究開発概要

図1: SIP「物流・商流データ基盤」の構築、省力化・自動化に資する自動データ収集技術の研究開発概要

SIP「物流・商流データ基盤」の全体像

図2: SIP「物流・商流データ基盤」の全体像

物流情報標準ガイドラインの策定経緯

上記の通り、物流情報標準ガイドラインの主な目的は、「物流・商流データ基盤」内で取り扱うデータの標準形式を規定することです。加えて、「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」(2021年6月閣議決定)で物流標準化の推進の重要性が指摘されています通り、「物流・商流データ基盤」外でも本ガイドラインが広く活用されることで、より幅広い関係者間でのデータ連携の実現を目指しています。

本ガイドラインのベースは物流XML/EDI標準です。物流XML/EDI標準は物流EDI標準JTRNがベースであり、起源は物流業務EDI調整委員会(主導:通商産業省、運輸省)に遡ります。1996年、物流業務EDI調整委員会は物流EDI推進機構、日本電子機械工業会、日本ロジスティクスシステム協会がそれぞれ策定した標準を一本化し、物流EDI標準JTRNを公開しました。JTRNは荷主企業と物流事業者のデータのやり取りで必要な標準メッセージ、データエレメント、データコードなどを定義しています。その後、物流EDI推進委員会に石油化学業界、自動車業界、食品業界、倉庫業界、物流業界など幅広い団体・事業者が委員として参画したことで、企業間でEDIを導入する場合の汎用的な標準として、JTRNが多くの業界で使われるようになりました。

一方、様々な業界の意見を追加したためにデータ項目が多くなり、必要項目の取捨選択が必要になる場面が増えました。そのため、真に必要な項目に絞り込みスリム化したものが物流XML/EDI標準です。

物流標準標準ガイドラインは、SIPスマート物流サービスの理念に即した業務プロセスの実現のために必要なメッセージやデータ項目を物流XML/EDI標準に追加したものです。本ガイドラインは、SIP内に設置した幅広い業界の有識者で構成される物流情報標準化検討委員会での協議を経て、2021年10月に初版を公開しました。その後、さらに業界団体ならびに事業者の皆様より頂戴したご意見を再度協議し、2022年10月にVer.2.00を公開しました。(物流情報標準ガイドラインは誤植を修正し、現在の最新版は Ver.2.01)

物流情報標準ガイドライン策定の経緯

図3: 物流情報標準ガイドライン策定の経緯

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